健康志向で選ばれる!2025年注目の果実・野菜ランキング

この記事の要約
2025年、日本農業新聞による最新の「農畜産物トレンド調査」にて、果実部門では愛媛県産の高級かんきつ「紅まどんな」が2年連続で1位を獲得。野菜部門では、手軽に調理できる「ブロッコリー」が首位に選ばれました。背景には、健康志向や簡便性、国産回帰といった消費者ニーズの変化があります。本記事では、最新トレンドの詳細や人気商品の理由、今後注目される品目の動向を探ります。
「紅まどんな」と「ブロッコリー」がW首位に
日本農業新聞が発表した2025年版「農畜産物トレンド調査」によると、果実カテゴリーでは紅まどんな(愛媛県産)、野菜カテゴリーではブロッコリーがそれぞれ1位を獲得しました。
この調査は、全国の青果流通業者、量販店、生産者、外食企業など計400名を対象に、今後の売れ筋や消費者需要に基づいて実施されたもので、業界関係者からの注目度も高い内容です。
昨年と比較しても健康志向や手軽さを重視する傾向がさらに顕著となり、加えて“おいしさの確かさ”や“プレミアム感”を重視した選定が上位に影響していると見られます。
果実1位:「紅まどんな」──なめらかな果肉と希少性が評価
愛媛県のオリジナル品種「紅まどんな」は、ゼリーのようななめらかな食感と高糖度で知られ、ここ数年でギフト需要や家庭消費が急拡大しています。
■ 紅まどんなの特徴
- ● 糖度12度以上の甘み
- ● 果皮が薄くジューシーな食感
- ● 収穫量が限られており高級感がある
「贈答用フルーツとしても最適」「皮をむく手間がなく子どもでも食べやすい」などの点が評価され、2年連続のトップ獲得となりました。
一方で、「価格が高く、安定流通しにくい」といった課題も残っており、今後の生産体制強化と市場調整が期待されます。
野菜1位:「ブロッコリー」──万能食材としての地位確立
野菜部門で1位に選ばれたのは、抗酸化作用の高いスルフォラファンやビタミンCを豊富に含む「ブロッコリー」です。
サラダ、炒め物、付け合わせなど用途が幅広く、下ごしらえも簡単。冷凍ブロッコリーの普及もあり、家庭での消費が急増しています。
■ 売れ筋としての要因
- ● 電子レンジ加熱だけで調理可能
- ● 健康食・筋トレ食として定着
- ● 冷凍食品でも品質が安定
特に20〜40代女性や単身世帯からの人気が高く、「副菜に迷ったらブロッコリー」という声もあるほど定番化しています。
今後は、国産ブロッコリーの安定供給や、無農薬・オーガニック対応が進むことで、さらに評価が高まると見込まれています。
“次に来る”果実はどれ?注目フルーツの動向
今年の果実部門で「紅まどんな」に続く売れ筋として注目されたのが、以下の3種です。
■ ① シャインマスカット
- ● 種なし・皮ごと食べられる手軽さ
- ● 鮮やかなグリーンで見た目も美しく、ギフト需要も高い
- ● 国内外で高評価が続いており、輸出用フルーツとしても期待大
ただし、盗難・不正流通や苗木の無断持ち出しなどの課題も多く、ブランド保護への取り組みが問われています。
■ ② いちご(特に「あまおう」「とちおとめ」)
- ● 手軽なデザート需要
- ● コンビニ・スーパーでも購入可能な汎用性
いちご狩り需要や家庭用ギフトセットの人気に支えられ、消費者人気が持続。冷凍いちごやスムージー原料としての展開も広がりつつあります。
■ ③ 桃(白鳳・黄金桃など)
- ● ジューシーで柔らかな果肉
- ● 夏の贈答品として根強い支持
家庭用だけでなく業務用(カフェ、ケーキ店)での需要もあり、「桃フェア」などシーズン限定の販促との相性も良好です。
ネクストヒットはこれ?台頭する“次世代野菜”たち
今年の野菜ランキングではブロッコリーが1位を飾りましたが、次に来ると予測される“注目野菜”として、以下が挙げられています。
■ ① ミニトマト
「手軽に洗ってそのまま食べられる」「弁当・副菜に使いやすい」などの理由で、継続的に人気を集めています。
特に、糖度の高い「アイコ」や「ピッコラルージュ」などの品種が注目を集めており、見た目のバリエーションや甘み重視の選別が進んでいます。
■ ② スティックセニョール(茎ブロッコリー)
通常のブロッコリーよりも柔らかく、茎まで丸ごと使える汎用性の高さから、家庭・外食の両面で需要が増加しています。
調理の時短や、見栄えのよさも評価されており、「ブロッコリーの次」に定着しそうな勢いです。
■ ③ アスパラガス
冷凍輸入品が主流でしたが、近年は国産アスパラガスの甘さ・やわらかさに注目が集まり、再評価されています。
「食感が良い」「季節感がある」として、イベント用惣菜やホテルバイキングなどでも採用が増加中。
消費者ニーズの変化──売れる農畜産物の共通点とは
2025年の調査で特に際立っていたのは、「健康志向」と「簡便性」の2軸です。
■ 健康志向の高まり
- ● 抗酸化作用・食物繊維・ビタミンなど“栄養機能性”が重視される
- ● ダイエット・筋トレ・腸活などの目的に合わせた選び方が定着
SNSでは「#腸活ごはん」「#ヘルシー食材」などの投稿が増え、ブロッコリーやいちごの登場頻度が高まっていることからも、食と健康のつながりが意識されていることがわかります。
■ 簡便性・時短ニーズ
- ● レンチン調理・洗うだけでそのまま食べられる食材
- ● カット野菜・冷凍食品の活用で“手間をかけない料理”が主流に
ブロッコリーやミニトマトが強いのは、この“簡単においしく食べられる”という条件を満たしているからでもあります。
また、冷凍技術の進化により、鮮度を損なわない「冷凍果実・冷凍野菜」も台頭しており、今後さらに冷凍農畜産物市場の拡大が予測されます。
“売れる農産物”をどう売るか──販促・流通の工夫とは
トレンド品目はただ「人気があるから売れる」のではなく、消費者の心理に響く“伝え方”や“見せ方”が成功のカギを握っています。
■ POP・パッケージ・売り場演出の強化
- ● 紅まどんなのように高級感のある果実は「贈答ニーズ」を意識したPOPとビジュアル
- ● ブロッコリーなど日常需要の高い野菜は「調理簡単」「栄養満点」など機能性を前面に
近年ではQRコード付きのレシピ提案、Instagram投稿を促すPOP展開など、デジタル連携型のプロモーションも増加中。特に若年層への訴求に効果的です。
■ “〇〇フェア”によるシーズン性・旬訴求
いちご・桃・柑橘類といった季節性が強い品目は、「今しか食べられない」プレミアム感の演出が有効です。
例
- ● 冬:「あったか鍋野菜フェア」(白菜・長ねぎ・春菊)
- ● 春:「新生活応援!朝ごはん野菜特集」(ミニトマト・スティック野菜)
- ● 夏:「熱中症対策フルーツコーナー」(スイカ・メロン・桃)
こうした季節と結びついた売り場提案が、購買動機を刺激します。
生産者・流通業者に求められる“戦略的視点”
トレンドを読み解くだけでは不十分。実際に“売れる体制”をつくるには、生産者・小売・物流が一体となった戦略設計が不可欠です。
■ 安定供給体制の確保
トレンド入りするほど注目される品目は、逆に「品薄→価格高騰→消費離れ」のリスクもあります。
紅まどんなのような希少品種や、国産アスパラのような生産地が限られる品目では、次のような対応が求められます。
- ● 農協・産地直送ルートでの事前予約体制の構築
- ● 天候リスクを見越した契約栽培・複数ルート確保
■ 消費者ニーズに即した“小分け・加工対応”
1人分〜2人分のパック販売や、カット済み・冷凍済みの加工品など、「面倒を省いた状態」で流通させる工夫も重要です。
たとえば、
- ● ブロッコリーの「1回分冷凍」
- ● シャインマスカットの「粒だけ冷蔵パック」
といった加工対応が、家庭用のみならず飲食業界・高齢者施設向けの需要も喚起します。
今後注目される農畜産物は?2026年の兆し
現時点で“次のトレンド候補”とされている農畜産物をいくつか紹介します。
■ 国産レモン・ライム
輸入品が中心だった柑橘の中で、国産の安全性・香り・品質の良さに注目が集まっています。
カクテル需要やフレーバーウォーター、料理用の需要など、使い道の多さが魅力です。
■ 生食用とうもろこし(ゴールドラッシュ等)
フルーツ感覚でそのままかじれる、糖度の高いとうもろこしが市場で話題に。
「スイーツ野菜」としての売り出し方もでき、子ども向けイベントや道の駅でも人気です。
■ 新型卵(機能性卵・高タンパク卵)
農畜産物の中で“完全食品”とされる卵は、プロテインブームとリンクし、付加価値化が進行中。
DHA強化・葉酸入り・ビタミン強化など、目的別で選ばれる時代に突入しています。
まとめ──“売れる”から“育てる”農畜産物戦略へ
2025年のトレンド調査は、単なる“人気品目ランキング”にとどまらず、 消費者ニーズの変化・ライフスタイルとの接続・マーケティング戦略の転換を促す重要な示唆を与えています。
ポイントは以下の3点です。
- ● 健康志向・簡便性・時短が“選ばれる”キーワードに
- ● POP・SNS・加工・シーズン展開で“売れる仕組み”を設計
- ● 生産・流通の連携と、時代を見越した品目選定が重要
これからは、“売れているもの”を追いかけるだけでなく、 “次に売るもの”を育て、提案する農業・流通戦略こそが、地域と産業の未来を切り開いていくのです。