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有吉弘行の投稿が『THE SECOND』で波紋

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この記事の要約

2025年5月17日にフジテレビ系列で生放送された漫才賞レース『THE SECOND~漫才トーナメント~2025』にて、人気タレント・有吉弘行さんのX投稿が番組中に紹介されたことが、SNS上で大きな議論を呼びました。有吉さんの「囲碁将棋推し!頼んだぞ!」という一言が、審査に影響を与えるのではないかとの声が視聴者の間に広がり、賛否が交錯。視聴者参加型の演出がリアルタイムの番組進行にどう影響するのか、メディアの在り方にも疑問が投げかけられる結果となりました。

16年以上の漫才師の夢舞台「THE SECOND」とは

『THE SECOND~漫才トーナメント~』は、結成16年以上の芸歴を持つ漫才コンビが主役となる、実力派限定の漫才コンテストです。M-1グランプリのように若手を中心とする大会とは一線を画し、芸歴を重ねた中堅コンビの魅力と実力にスポットを当てた構成が大きな特徴となっています。

この大会はフジテレビが主催し、2023年にスタート。2025年で第3回を迎え、すでに芸人界隈のみならず、一般視聴者からも熱視線を浴びる存在となっています。

この年の大会も、予選から準決勝にかけて数々の激戦が繰り広げられ、最終的には“準ファイナリスト”8組が選出。彼らが生放送の決勝トーナメントでトロフィーを競い合う形となりました。

注目度は年々上昇しており、SNS上でも「THE SECOND」がトレンド入りするほどの盛り上がりを見せています。

生放送中に紹介された有吉弘行のX投稿

この日の番組は終始緊張感と期待感に包まれていましたが、そんな中、思わぬ形で視聴者の注目を集めたのが、有吉弘行さんの投稿でした。

フジテレビの小室瑛莉子アナウンサーがX上の視聴者投稿を紹介するコーナーの中で、有吉さんによる「囲碁将棋推し!頼んだぞ!」という投稿が読み上げられたのです。

有吉さんは言わずと知れた芸能界きっての人気タレントで、SNSでも発言が即拡散されるインフルエンサー的な存在。その彼が、出場中のコンビ「囲碁将棋」を名指しで応援する形となったことで、スタジオ内もざわめきました。

この一幕は一見、ただの応援コメント紹介のようにも思えますが、SNSを中心に「これって公平なの?」「番組中に紹介するべきではなかったのでは」といった声が急速に広まり、ちょっとした騒動へと発展していきます。

「公平性」に疑問を投げかけた視聴者の声

生放送終了直後から、XをはじめとするSNSでは関連ワードが続々とトレンド入り。「囲碁将棋」「有吉弘行」「審査に影響」などのキーワードが並び、多くの視聴者が違和感を訴えました。

「有吉クラスの影響力あるタレントが、特定のコンビを名指しで応援した上で、それを番組内で紹介するのはやはり影響力が大きすぎる」「生放送でそれを読む必要あった?」など、批判的な声も見受けられました。

一方で、「別に応援ぐらい自由じゃない?」「あれで審査に影響するような審査員なら最初からおかしい」と、擁護派の意見もあり、ネット上では議論が白熱しました。

当の有吉本人も反応、「ご注意を」と一言

議論が加熱する中、当の有吉さんもこの状況に反応。自身の投稿をリポストし、「というわけなんです。こんなもんなんでご注意を」とコメントをつけました。

この投稿はやや皮肉も交えたトーンであり、有吉さんらしい軽妙なスタイルで騒動をやんわりといなす形となりました。ただし、「ご注意を」という言葉には、「番組内で紹介される可能性がある」という、すべての投稿者への警鐘のようにも読み取れます。

このやりとり自体もまた注目され、メディアでも取り上げられるなど、波紋はしばらく続くこととなったのです。

囲碁将棋とは? 長年の実力が注目を集める理由

有吉弘行さんが投稿で名指しした「囲碁将棋」は、2004年に結成されたベテランコンビ。メンバーは文田大介さんと根建太一さん。吉本興業所属で、M-1グランプリなどでも着実に結果を残してきた実力派です。

知名度こそ若手コンビに比べて爆発的とは言えないものの、独自のテンポと切れ味あるツッコミ、知的でユーモアの効いた構成が評価され、多くの芸人から「芸人ウケのいい芸人」としても知られています。

『THE SECOND』の趣旨に最もフィットするタイプのコンビといえる彼ら。今回もネタの精度は群を抜いており、ネット上でも「やっぱ囲碁将棋は安定感ある」「文田さんのツッコミ冴えすぎてた」など、ポジティブな反応が相次ぎました。

ネタの内容と審査員の反応

囲碁将棋が披露したネタは、いわゆる“設定ボケ”を軸とした、会話劇スタイルの漫才。スーツ姿で登場し、序盤から一貫して知的ながらユーモラスな世界観を展開し、観客の爆笑を誘いました。

審査員のコメントも上々で、「さすが芸歴20年近くの重厚さ」「ネタの構成が綺麗で落ち着いて見ていられる」といった評価が見られました。ただ一方で、「もう一つ突き抜けた展開があれば完璧だった」という指摘もあり、満点ではないものの非常に高い評価を受けました。

注目すべきは、そうした評価と並行して視聴者の関心が「有吉さんの投稿が審査員に影響を与えたのでは」という疑念に向いていったこと。あくまで冗談交じりの意見から、深刻な疑義まで、Xには多様な反応が見られました。

SNSで交錯する擁護派と批判派

番組放送後、SNSでは擁護派と批判派が真っ向からぶつかる形となりました。

擁護派は、「有吉さんはあくまで一視聴者としての発言であり、芸人仲間を応援するのは自由」「これで影響される審査員はいないだろう」というスタンス。一方、批判派は「発言者の影響力と、それを公共の電波で読み上げたことは分けて考えるべき」「審査に公平性を求めるなら、紹介の時点で問題だ」という見方を強めました。

この論争は深夜帯まで続き、「有吉さんの応援投稿」は翌日朝になってもトレンドに残り続けました。ワイドショーやネットニュースでも取り上げられ、単なる一投稿が番組全体の印象すら左右する事態へと発展したのです。

制作サイドとテレビの新しい課題

この出来事は、テレビ番組における「SNSとの距離感」を考える上でも、大きな論点を提示しました。

生放送という形式において、SNSとのリアルタイム連動は視聴者との双方向コミュニケーションを生む一方で、情報の即時性と予測不能性というリスクも孕んでいます。有吉さんのようにフォロワー数が圧倒的に多く、影響力の強い人物の投稿を拾うことが、「演出」や「審査」にどう関わるのか、今後の基準作りが求められるでしょう。

今回のように賛否が割れるケースにおいては、出演者・制作側・視聴者の「三者三様の見解」が交錯し、問題を複雑化させます。あくまで番組を盛り上げたいという意図が、別の角度から「誘導」に見えてしまう可能性は否定できません。

果たして、視聴者とタレント、番組がどう距離感を保ちつつ、健全なエンタメを成立させるのか。テレビの新しい在り方が問われ始めているのかもしれません。

過去にもあった? SNSと放送の“クロス影響”事例

今回の『THE SECOND』に限らず、テレビとSNSがリアルタイムで絡み合い、番組進行や評価に影響を与えるケースは、過去にも複数存在しています。

記憶に新しいのは、2023年に放送された某音楽番組にて、審査員がXで投稿されたタレントの「歌唱評価」をそのまま番組内で読み上げた件です。このときも「視聴者の声を拾う」という演出が、逆に公平性への疑念を招きました。

また、お笑い賞レースでも、過去に審査中に出演芸人の“過去の炎上発言”がSNSで再拡散され、それが審査に間接的な影響を与えたとされる事例もありました。ネットの発信力が強まる中で、テレビという「閉じたメディア空間」が、もはや“無菌室”ではいられなくなっている現状が浮かび上がっています。

制作側が視聴者の声を反映しようとする姿勢自体は歓迎されるべきですが、その際に「何を、どこまで拾うのか」という編集判断が一層難しくなっていることは間違いありません。

視聴者の心理はどこにあるのか

では、こうした事例において、視聴者が何に反応しているのか——それは「操作されたかもしれない」という感覚です。実際に操作されているか否かは重要ではなく、「もしかして?」と感じさせた時点で、番組への信頼感が揺らぎ始めるのです。

たとえ制作サイドに意図がなくても、有名人のコメントが「公平な判断の一部のように」扱われてしまった時点で、“出来レース”という疑いが生じるのは避けられません。特に、賞レースやコンテスト形式の番組では、その構造上「評価=信頼」が成り立っているため、ちょっとしたノイズでも印象が激変するのです。

「公平性」はコンテンツの面白さと同じくらい、視聴者にとって重要な価値です。多くの人は、贔屓や推しを持ちながらも、「結果は納得したい」「筋を通してほしい」と願っています。

その意味で、有吉さんの投稿は何ら意図のない、単なる応援に過ぎなかったとしても、紹介という行為を通して“意味”が生まれてしまったのです。

有吉弘行が放った一言が示したもの

今回、有吉弘行さんは「というわけなんです。こんなもんなんでご注意を」と締めくくりました。これは単なる自嘲的な発言ではなく、現在のメディア環境全体への警告にも思えます。

SNS時代における「一言」の重み。誰かが一言発すれば、もう一人が反応し、それがテレビを通して“現実化”されてしまう。そのサイクルの速さと拡散力は、従来のメディア論の枠をはるかに超えた次元に達しています。

同時に、有吉さんの発言があったからこそ、“テレビとSNSの関係”という本質的な問題に光が当たったとも言えます。騒動の火種となった投稿が、最終的にテレビの未来を考えるきっかけとなったことは、皮肉ではありますが意義のある出来事です。

『THE SECOND』が残した教訓と今後の展望

『THE SECOND~漫才トーナメント~』2025年大会は、多くの笑いと感動、そして議論を生み出しました。芸歴16年以上というベテランたちがぶつかり合う姿は、多くの漫才ファンにとって最高のエンターテインメントだったことは間違いありません。

一方で、今回のようなSNS投稿と番組演出の“交差”が、思わぬ形で波紋を広げることも改めて証明されました。番組は一度生放送されて終わりではなく、その“周辺”に広がるコミュニケーションまでもが、視聴体験の一部になっているのです。

今後、こうした演出のあり方、そして出演者・制作者・視聴者がどう相互に関わるかを再定義する必要が出てくるでしょう。

“応援”の一言が審査を揺らがせるかもしれない時代。だからこそメディアは、その責任の重さと向き合いながら、新たな公正性の形を模索していかなければなりません。

最後に、視聴者として私たちが持つべきは、過剰に反応するのでもなく、無関心になるのでもなく、「番組を信じて見守る目」なのかもしれません。

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