44年連続減少…こどもの数「危機的状況」少子高齢化の闇

この記事の要約
総務省が2025年に発表した人口統計によると、日本の15歳未満の子どもの数は1366万人と過去最少となり、44年連続で減少を続けていることが明らかになりました。本記事では、その背景にある少子化の要因、政府や自治体の取り組み、そして今後私たちが直面する社会構造の変化について、ジャーナリスティックな視点で詳しく掘り下げていきます。
日本のこどもの数、過去最少に
2025年5月、総務省が発表した最新の人口統計データによると、日本における15歳未満の子どもの数は1366万人にとどまりました。これは前年よりも30万人近く減少しており、44年連続での減少という深刻な事態です。特に注目すべきは、こどもの割合が全体人口の10.8%にまで下がっているという点です。この数字は、先進国の中でも極めて低く、日本がいかに深刻な少子化問題を抱えているかを如実に物語っています。
「また減ったか…」と、もはや恒例行事のように受け止める人もいるかもしれません。しかし、筆者としてはこの44年という連続減少の長さにこそ、危機感を覚えずにはいられません。少子化という言葉が社会に定着し、むしろその「当たり前」に慣れてしまっている空気こそが、今の日本の最も大きな問題なのではないかと感じます。
統計データが示す現実
総務省のデータをもう少し掘り下げてみましょう。男女別に見ると、男子が699万人、女子が667万人。地域別では、最も子どもの割合が高かったのが沖縄県で16.3%。逆に最も低かったのが秋田県の9.0%という結果となっています。つまり、全国どこでも一律に減っているわけではなく、地域差が明確に表れ始めているのです。
また、子ども人口が総人口に占める割合は、1982年にはまだ25%近くだったことを思い出すと、この40年余りでの変化は驚異的です。まるで右肩下がりのグラフに沿って、未来が静かに傾いていくような、そんな錯覚に陥るほどです。
こうした人口構造の変化が与える影響は、教育制度、地域社会、医療体制、年金制度、そして何よりも「働く世代の負担」に直結してきます。
筆者もこのニュースを受けて改めて自分の住む地域を見渡してみましたが、少子化は単に「こどもが減っている」だけではなく、地域の活力、未来の担い手が目に見えて減っていっていることを実感させられました。
少子化の背景にある要因とは
「少子化」と一言で片付けるには、あまりにも複雑な背景が絡んでいます。まず大きいのは晩婚化と未婚化の進行です。日本では結婚=出産という価値観がいまだに強く根付いており、結婚しない限り子どもを産むという選択肢が現実的ではないケースが多いのが実情です。
また、子育てに対する社会的支援の薄さや、女性のキャリアと育児の両立の難しさも依然として大きな壁となっています。「産んだ後が大変だから」という声は、筆者の周囲でもよく耳にします。これはあくまで感覚的な話ですが、最近は20代後半から30代前半の女性たちの間でも「産むこと自体に慎重になっている」という印象が強まっているように感じます。
経済的な問題も無視できません。出産や育児にかかる費用、教育資金、さらには住宅ローンや老後の資金といったライフステージに応じた負担がのしかかる中で、「子どもを産む余裕がない」という選択をする人が増えているのです。
もちろん、これらの要因を一つひとつ解決していくことは並大抵のことではありませんが、それでも「何も変えないままでいる」というのが最も危険だというのは誰の目にも明らかです。
これからの日本社会に求められること
では、こうした状況を踏まえたうえで、今後の日本にはどのような取り組みが求められているのでしょうか。これは単なる「子どもを増やしましょう」という呼びかけだけでは到底解決しない、社会全体の価値観と制度の見直しが必要な課題です。
まず、子育てしやすい環境の整備が急務です。例えば保育園の整備状況や、柔軟な働き方の促進、育休取得に対する企業側の理解や支援など、現場レベルの課題がまだ山積しています。筆者は取材で訪れた保育施設の現場で、「本当に預かれる人手が足りていない」と語る保育士の方の声を直接聞きました。国の制度だけでは届かないところにこそ、現実の壁があります。
また、根本的な問題として「子どもを産み育てることが“自己責任”のままである」社会の空気を変える必要があります。支援策があったとしても、それが機能していなければ意味がないのです。「どうせ使いにくい」「申請が煩雑」「一部の人しか恩恵を受けられない」——そんな不満の声をSNSでも頻繁に見かけます。
特に印象的だったのが、以下のようなXでの声です:
「子どもが少ないとか言うけど、産んでからのサポートが心もとないんだよね。制度があっても使いにくい」
「産みたくても職場復帰が難しいから諦めた。保育園も競争激しいし…」
「地方に移住したけど、周りはお年寄りばかり。子育て仲間がいないのがつらい」
「少子化って言うけど、そもそも結婚すら難しい時代だよね…」
「支援金より、まずは働きやすさと居場所を整えてほしい…」
こうした“生活者の声”にもっと耳を傾けることが、制度設計や政策立案の第一歩になるべきです。数字や統計だけを見ていても、本質は見えてこない。現場のリアルをきちんと反映させた政策が必要不可欠です。
筆者個人としても、「子どもが減っている=社会が衰えている」という単純な図式ではなく、「支え合う構造が崩れている」ことに危機感を抱いています。出生数を回復させることだけでなく、そもそも「どんな社会なら子どもを持ちたいと思えるのか?」という問いに、政治も企業も、市民社会も真剣に向き合わねばなりません。
今は、「産みたい人が産める社会」すらまだ実現できていないのが現実。出生数の増加をゴールにするのではなく、「産む・育てるという営みが自然に成立する社会」に近づけることこそ、真に求められていることだと感じます。
特に、これから30年、40年と進んでいく人口構造の変化を考えると、今手を打たなければ間に合わない段階に差し掛かっているのは間違いありません。少子化は、“将来”の問題ではなく“現在”の問題なのです。
政府や自治体の本腰を入れた対策はもちろん、私たち一人ひとりが「子ども」「育児」「社会の未来」についてどう関わっていくかを問い直すことが必要なタイミングなのではないでしょうか。
筆者は、決して「みんなが子どもを持つべきだ」と言いたいわけではありません。選択肢の多様性が認められる時代だからこそ、その選択の背後にある「社会の構造」を整える責任が、いま私たち全員にあるのだと考えています。
こどもの日が過ぎ、ニュースサイトの片隅にそっと表示されたこの話題。けれど、この「静かな数字」が突きつけてくるのは、決して軽い未来ではありません。この現実を「誰かの問題」にせず、できるところから一歩ずつ、社会全体で考えていけることを願います。