家計簿を“つける”時代の終焉？

家計簿といえば、手書きのノートやExcelにレシートを写していく…そんなイメージを持つ人も多いでしょう。しかし、今その常識が大きく変わり始めています。きっかけは、AI技術の台頭です。

これまでも「自動家計簿アプリ」は存在していましたが、単なる入出金の記録やグラフ化にとどまり、ユーザーが“自分で管理”することが前提でした。ところが、近年登場したAI搭載型の家計簿アプリでは、“判断”や“提案”までAIが行ってくれるようになったのです。

たとえば、クレジットカードや銀行口座と連携すれば、毎月の収支を自動で記録し、カテゴリーごとに分類。さらにAIが「先月より食費が増えています」「今月はサブスクの見直しを検討しませんか？」といったアドバイスを自動で通知してくれるのです。

つまり、“記録”から“管理”へ、そして“提案”へ。家計簿は今、進化の真っ只中にあります。

「毎日入力」はもう不要？

AI家計簿の最大のメリットの一つが、ユーザーの手間を徹底的に省くことです。多くのアプリでは、レシートの写真を撮るだけで文字認識（OCR）して自動入力される仕組みが標準化しています。そこにAIが加わることで、誤認識の修正や、買い物傾向からのパターン分析も可能に。

「日々の記録は大事だけど、面倒…」という人ほど、AIによる家計管理の恩恵を受けやすいでしょう。

“使いすぎ”をAIが警告？

さらにAIは、単なる記録役では終わりません。たとえば、旅行や外食が続いて出費が増えてきた時、AIが「今週の支出が予算を超えそうです」とリアルタイムでアラートしてくれる機能を備えるアプリも増えています。

これはまさに、ポケットの中にいる“お金のプロ”。感情に流されがちな消費行動を、冷静に見守り、時にはブレーキをかけてくれる存在です。

もちろん、「今日はちょっと贅沢したい」「来月のボーナスがあるからOK」など、AIに頼りすぎず自分で判断する視点も重要ですが、それでも“気づき”をもたらしてくれるAIの存在は、生活の安心感を底上げしてくれることでしょう。

AIが描く家計管理の“未来像”

では、このAI家計簿が今後どう進化していくのか。いま注目されているのは、ライフプランとの連動です。

たとえば「5年後にマイホームが欲しい」「来年は子どもの進学で出費が増える」といった未来のイベントを入力しておけば、AIがそこに向けて逆算した貯蓄プランを提案してくれる機能が搭載されつつあります。

ある種、ファイナンシャルプランナーがアプリに宿るようなイメージ。これまでは一部の富裕層しか利用できなかったお金の専門的アドバイスが、AIによって庶民にも届く時代になりつつあるのです。

AIと感情のバランスがカギに

ただし、AIによる家計管理が万能というわけではありません。あくまでAIはデータに基づいた“合理的判断”を下すもの。たとえば「今月は記念日だからちょっと贅沢したい」といった“感情的支出”までは読み取れません。

そのため、今後は「人間らしい感情」も考慮するAIや、ユーザーの気分に応じて対応を変える“感情認識型家計簿”も登場するかもしれません。

「合理」と「情緒」。このバランスをどうとっていくかが、次世代の家計管理のキーポイントになりそうです。

実際に使ってみた！AI家計簿アプリ3選

ここでは、実際にAI家計簿アプリを使ってみてわかったメリット・デメリットを、リアルな声とともにご紹介します。

1. Money Forward ME｜全自動でズボラ向け

連携できる金融機関が多く、銀行口座やクレカ、電子マネーからのデータをほぼ全自動で一元管理できるのが特徴。

家計簿を「つける」という意識すら必要なく、放っておくだけで収支が記録され、毎月の支出グラフや予算との乖離もAIが通知してくれます。

ただし、無料プランだと連携先が制限されるため、本格的に使いたい場合は有料プラン（月額500円〜）の検討が必要です。

2. Zaim｜手入力派も満足の柔軟設計

Zaimは手入力にも優れており、レシート撮影機能の精度が高いのがポイント。AIが買い物傾向を学習し、月末には「来月予算案」を提示してくれる機能も。

特に、家族との共有モードを使えば、夫婦間や親子間で家計の透明性を保てるのが嬉しいところ。

ただし、感情ベースの支出（例：ストレス発散の買い物など）はやや評価が厳しめかもしれません。

3. OsidOri（オシドリ）｜共働き家庭に最適

夫婦で家計を一括管理できるOsidOriは、共同口座の管理や役割分担機能が豊富。AIが「どちらの支出に偏っているか」も解析し、公平性を保ちます。

「話しにくいお金の問題」を可視化してくれる点で、パートナーシップ強化にも役立つ設計です。

一方で、シングルユーザー向けの細かい設定は他アプリに軍配が上がる印象です。

AI家計簿は万能？落とし穴にも注意

AIによる家計管理は確かに便利で革新的ですが、いくつか注意すべき点もあります。

① セキュリティの懸念

家計簿アプリの多くは銀行・カード情報と連携するため、セキュリティリスクがゼロとは言えません。特に無料アプリを使う場合は、運営元の信頼性をよく確認することが必要です。

通信はSSLで暗号化されていても、スマホの紛失や乗っ取りには注意が必要。必ずパスワード設定や二段階認証などで対策しましょう。

② AIの提案はあくまで“参考”

AIのアドバイスは論理的ではありますが、あなたの感情や価値観を完全に理解しているわけではありません。

「推奨されたからやる」「否定されたからやめる」と鵜呑みにせず、自分の軸を持ってAIの助言をうまく活用する姿勢が大切です。

③ 使い方次第で“浪費”にもなる

意外かもしれませんが、「AI家計簿を使って節約しよう」と意気込むあまり、有料機能や新しい家計アイテムを次々試して散財してしまう人も少なくありません。

「家計管理＝楽しく快適」が理想ですが、ツールに振り回されないよう、“目的と手段”を履き違えないことが重要です。

まとめ｜AIと一緒に“未来の家計”をデザインしよう

AIと家計簿の組み合わせは、まさに時代の最先端。面倒くさい記録作業から解放され、未来志向の資産設計までサポートしてくれるAI家計簿は、忙しい現代人にとって欠かせないライフハックツールになりつつあります。

とはいえ、AIにすべてを任せるのではなく、「あくまでパートナーとして付き合う」ことが大切です。あなたのライフスタイルに合った家計簿アプリを選び、自分らしいお金の使い方を見つけていきましょう。

「家計簿＝面倒くさい」は、もう古いかもしれません。

これからは、「AIと一緒に楽しく、お金と向き合う時代」なのです。