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退職代行の裏側がヤバすぎる…その実態とは?

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この記事の要約

若者を中心に利用が拡大している退職代行サービス。一見、救世主のように見えるそのサービスの裏には、企業とのトラブル、精神的依存、金銭的損失など、見過ごせない“闇”も存在している。本記事では、退職代行の実態とその問題点を、多角的に深掘りしていく。

退職代行が急増する背景とは

最近、SNSやネットニュースで「退職代行」という言葉を頻繁に見かけるようになりました。以前なら「辞めるのは本人が直接言うもの」というのが常識でしたが、今やその常識は崩れつつあります。

実際、退職代行サービスの利用者は2018年以降、急激に増加しており、とある大手代行業者では2024年の利用件数が前年比140%増というデータもあります。中でも特に目立つのが、20代〜30代の若年層。働き方や労働観の変化、メンタルヘルスへの意識向上が背景にあると見られています。

とある元利用者は「上司に退職の意思を伝えるのが怖すぎて…」と告白。退職するというたった一言が言えないほど、職場に対して恐怖心や抵抗感を抱えていたようです。

こうした背景から、退職代行は“逃げ”というよりも“自衛”の手段として見直されている一面もあります。特にブラック企業とされる環境では、退職を告げた瞬間に嫌がらせが始まるというケースもあり、弁護士監修の代行サービスのニーズが高まっているのも事実です。

しかし、急激に拡大するマーケットには、必ず光と影が存在します。次章では、企業側の本音や困惑を見ていきます。

企業側の本音と困惑

「ある日突然、弁護士事務所から“退職の通知書”が届いた」──これは都内の中小企業で人事を担当する男性の証言です。

最近では、労働者側が直接職場と接触せずに退職できるよう、弁護士を介した退職代行が主流になりつつあります。ですが、企業側としては「え?何があったの?」と混乱することも少なくありません。

また、代行サービスから送られてくる通知書は、あくまで“意思表示”であり、法的効力がないものも多いのが実情。企業としては、本人と直接やり取りをしない限り、業務引き継ぎができず、現場が混乱するケースもあります。

「繁忙期に突然辞められると現場が回らない」という声もあり、現場責任者としては「モヤモヤした感情が残る」といいます。

このような中、企業側も“退職代行対策マニュアル”を作るようになってきており、労働者と企業の“断絶”が進んでいる印象も否めません。

退職代行を使った人のリアル

さて、では実際に退職代行を使った人たちは、その後どうなったのでしょうか。

都内在住の26歳女性・Aさんは、都内の飲食チェーン店を退職する際に代行サービスを利用しました。「パワハラが酷くて、もう話す気力すら残ってなかった」と語るAさん。代行業者がすべて手続きを済ませてくれ、無事退職できたといいます。

一方で、「辞めた後に罪悪感に襲われた」と話すのは、同じく退職代行を使った経験のある29歳男性・Bさん。「逃げたように思われてないか」「職場の人に悪いことをしたのではないか」と葛藤を抱え、転職活動にも影響したと語ります。

退職代行には、確かに助けられる部分もあります。しかしその一方で、“他人に任せたことで失うもの”もあるのかもしれません。

SNS上でも賛否は分かれています。

「退職代行、ほんと助かった。あのときの自分じゃ無理だった」

「代行で辞めたけど、正直後味はよくなかったな…」

「使った人を責めるのは違う。でも、増えすぎなのは社会が病んでる証拠」

ここまでが前半です。次章では、業界としてのビジネスモデルとリスク、そしてこれから退職代行を使うか悩んでいる人への提言を掘り下げていきます。

退職代行は“ビジネス”なのか?

退職代行サービスは、もはやひとつのビジネスモデルとして確立しつつあります。一般的な相場は、民間業者で2万円前後、弁護士が関与するものでは3万円〜5万円程度。SNS広告やSEO記事を使った集客が功を奏し、コロナ禍以降さらに需要が高まりました。

“ニッチ”なビジネスに見えますが、特に若年層の離職率が高い業界(飲食、小売、介護など)ではリピートや紹介が発生することも。ある退職代行業者は「口コミで月に50件以上の依頼がある」と明かしています。

しかし、ここに落とし穴もあります。サービスの中には、運営実体が不明なもの、弁護士資格を持たない違法代行が堂々と営業しているケースもあり、消費者センターへの苦情も少なくありません。

退職代行を利用する側も「法律を守ってるところかどうか」を確認しないと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があるのです。

実際、弁護士法違反で摘発された事例もあり、業界全体に信頼性への疑念が投げかけられています。

弁護士法違反とそのリスク

弁護士資格を持たない者が、企業と直接交渉するのは弁護士法に違反する行為とされています。

「退職の意思を伝えるだけで交渉はしません」としている業者もありますが、実際には企業とのやりとりを“代行”しているケースも多く、そのグレーさは否定できません。

あるケースでは、非弁業者が企業と「退職日を交渉」したことで、企業側が業者を提訴。結果、損害賠償を求める訴訟にまで発展したそうです。

利用者からすれば「まさか訴訟沙汰になるなんて」と思うかもしれませんが、退職を“交渉”にした時点で、法的リスクが発生するという現実があります。

業者の質を見極めずに依頼してしまうと、後戻りできないトラブルを招くこともあるのです。

“即日退職”は本当に可能なのか

よく見かける「即日退職OK!」という文言。しかし、これも誤解を生む表現のひとつです。

実際には、民法627条により「退職の意思を伝えてから2週間後に効力が発生する」と定められています。もちろん、企業が合意すれば即日の退職も可能ですが、法的には2週間が基本なのです。

代行業者が「即日退職OKです!」と謳っていても、それは“伝えるだけなら即日”という意味であり、給与の支払い、保険の喪失、離職票の発行などは当然2週間以上かかる場合が多いです。

ここを理解せずに退職してしまうと、「あれ?社会保険どうなってるの?」「会社から書類来ないんだけど」といった“退職後の困惑”に繋がることがよくあります。

退職代行を使うか悩んでいるあなたへ

ここまで退職代行の実態やリスクを見てきましたが、それでも「もう限界」「どうしても辞めたい」という気持ちを持つ人は多いはず。

そうした時に、どうすれば良いのでしょうか?

筆者としては、「まずは信頼できる第三者に相談すること」を勧めます。自治体の労働相談窓口、労働組合、弁護士、キャリアカウンセラーなど、中立の立場から話を聞いてくれる存在が今はたくさんあります。

そして、退職代行を使う場合も“使い方”を間違えないこと。安さだけで選ばず、法的根拠や実績、口コミをしっかり確認するべきです。

また、自分が「なぜ退職したいのか」「今後どう働きたいのか」を整理することも非常に重要。代行サービスはあくまで“きっかけ”であって、その後の人生を導いてくれるわけではないからです。

「代行使って辞めたけど、その後どうしていいか分からなかった」

「辞めてから初めて、相談できる人の大切さに気づいた」

退職はゴールではなくスタート。短期的に職場を離れることができても、自分と向き合わなければ、次のステップには進めないのです。

退職代行を使った“その後”の人生

退職代行を使って辞めた人の「その後」は千差万別です。

ある人は新しい職場で気持ちを新たに頑張っていたり、ある人は「退職したはいいがブランク期間ができて転職活動に苦戦している」と悩んだり…。退職代行という手段は、確かに一つの選択肢として機能しますが、それをどう活かすかは結局、本人次第なのです。

中には、「代行を使ったことを面接で聞かれた」「それで落とされた気がする」と語る人もいます。もちろん法的に問題はなくとも、企業側がそれをどう受け止めるかは自由。その現実を忘れてはいけません。

特に若い世代に多いのが、「次の職場でもまた逃げてしまうのでは」という不安。実際に退職代行を繰り返し使っているケースもゼロではなく、「便利すぎて、職場に適応する意欲が薄れた」という声も耳にします。

もちろん、ブラック企業で心をすり減らすよりは一度リセットした方が良いという意見も理解できますが、「代行は逃げ」ではなく「戦略的撤退」であるべきだというのが筆者の考えです。

社会が受け入れられるかどうか

退職代行を使った経験をどう語るかは人によって異なります。

「正直に話すとマイナスに取られると思って、履歴書には“一身上の都合”とだけ書いた」

「次の職場で上司にバレて『逃げ癖あるんじゃないの?』って遠回しに言われた」

「ちゃんとした理由を添えて説明したら、意外と理解してもらえた」

結局は“理由”と“伝え方”が大切。どんな状況でも、自分の意志を持って選んだ行動であれば、それは立派な人生経験です。問題は、誰かに流されて、ただ「ラクだから」「みんなやってるから」といった理由で選ぶことではないでしょうか。

退職代行が映し出す日本社会の課題

筆者がこのテーマを取材していて感じるのは、「退職代行の拡大=日本の労働環境の限界の現れ」だという点です。

“退職の意志”すら素直に伝えられない空気、辞めると「甘えてる」と責められる風潮、過度な引き止め、同調圧力…。本来、仕事を辞めることは個人の自由であり、人生の選択のひとつに過ぎないはずです。

にもかかわらず、それを代行してもらわなければならない状況があること自体、企業文化や労務管理の問題だと言えるでしょう。

さらに、「上司に言えないから代行を使う」という心理的ハードルの低さは、日本の教育や社会構造にも一因があるように感じます。自己主張を避ける、波風を立てたくない、責任を取るのが怖い…そんな感情が背景にあるのかもしれません。

そういった意味で、退職代行ブームは単なる流行ではなく、“日本社会の闇”を可視化した鏡だといえるのです。

法整備の遅れと求められるルール作り

現状、退職代行を規制する明確な法律は存在しません。弁護士法違反の境界は曖昧で、各事業者の“良識”に任されているのが実態です。

利用者保護の観点から見れば、最低限のガイドラインや業者登録制度などが必要とされるのではないでしょうか。

国としても、若年層の離職率やメンタル不調の増加に対応する必要がある今、退職代行の存在を“グレーゾーン”のままにしておくことはリスクが高いように思えます。

退職代行の未来とは

退職代行がここまで市民権を得たのは、裏を返せば“本当に必要としていた人が多かった”という証拠でもあります。

それ自体を否定するつもりはありません。筆者自身も、「あの時代にあったら助かったかも」と思う瞬間があります。

ただし、便利すぎる仕組みには、必ず“副作用”があります。退職という人生の節目を、ただ誰かに丸投げしてしまうことが、本当に自分のためになるのか。ひとりでも多くの人が、その問いに立ち返ってくれることを願っています。

退職は“ゴール”ではなく、“再スタート”の合図。退職代行は、その“通過点”でしかありません。

これから社会に出る若者も、すでに働いている社会人も、“辞める権利”をもっと正しく理解し、活用していける世の中になることを願っています。

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