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人手不足と副業解禁の関係とは?統計から見える意外な真実

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この記事の要約

副業が「一部の人の特権」から「誰もが考える選択肢」へと変化してきた背景には、労働市場の大きな構造変化があります。本記事では、政府統計や人材調査などのデータをもとに、「なぜ今これほど副業が増えているのか?」を探っていきます。働き方改革や人手不足、そして企業の副業解禁など、相互に作用する複数の要因をわかりやすく解説しつつ、読者自身のライフスタイルや収入戦略にどう影響しうるかを深掘りしていきます。

副業増加は「働き方改革」がきっかけだった?

かつて、日本の企業社会では「会社の仕事だけをしている人」がもっとも評価される傾向がありました。副業なんてとんでもない、という空気も長く根強くありました。

しかし2018年、政府が「モデル就業規則」を改定し、副業・兼業を原則容認する方針を示したことで状況が一変します。この「働き方改革」は、単に残業を減らすだけの制度ではなく、労働者が複数の仕事を掛け持つことを正当化しやすくした、いわば“副業解禁元年”でもありました。

厚生労働省の調査によると、2017年時点で副業を容認していた企業は全体の2割以下にとどまっていましたが、2023年には約5割まで増加しています。実に倍以上。企業側が「副業OK」と方針を変えたことが、従業員の行動変容を後押ししたのです。

この背景には、「単一企業での長期雇用と終身保障はもはや幻想」という現実があります。大企業であっても人員削減や早期退職を実施する時代。サラリーマンも、自分の人生と収入のポートフォリオを複線化する必要が出てきました。

副業とは、選ばれた人の選択肢ではなく、“生き延びるための現実解”として浸透し始めているのです。

なぜ副業がブームになったのか?

では、なぜこの数年で副業がこれほどまでに盛り上がってきたのか。そこにはいくつかのデータが示す要因があります。

  • 企業の副業解禁(制度上の整備)
  • コロナ禍によるリモートワーク拡大と副業時間の確保
  • 物価上昇や賃金伸び悩みによる実質所得の減少
  • スキルシェア・クラウドソーシングの普及
  • 副業での成功事例やロールモデルの可視化

これらの要因が重なり、「誰もができる副業」「手軽に始められる収入源」として副業は浸透してきたのです。副業支援アプリやAI活用によって、収益化までのハードルが下がったことも大きな影響を与えています。

また、副業の種類も以前のように「夜のバイト」や「肉体労働」ばかりではありません。ライティング、動画編集、SNS運用、Webデザイン、AI関連の作業支援など、スキルベースの案件が増えてきました。

これは“副業=時給制の労働”という旧来のイメージを一新させ、「副業=スキルの価値交換」「副業=将来への投資」という考え方へとシフトさせています。

働き手側の「変化する意識」も重要な要素

企業が副業を認め、環境が整ったとしても、実際に行動に移すのは個人です。ここ数年で大きく変わったのは、働き手側の意識です。

たとえば内閣府が実施した「副業・兼業に関する意識調査」では、「副業をしたいと思う」と答えた人の割合は2018年に比べて2023年には約1.5倍に増加しています。特に20〜30代では約7割が「副業に関心がある」と答えており、若年層を中心に“副業前提社会”へと移行しつつあるのが現実です。

一方で「本業が忙しくて時間が取れない」「やってみたいけど稼げるか不安」という声もあり、関心が高まる一方で、“一歩を踏み出すにはハードルがある”という二面性も浮き彫りになっています。

実際に副業を始めた人たちのリアルな声には、「最初は月1,000円だったけど、今では月5万円になった」といった着実な成果もあれば、「クラウドソーシングで単価が安く、疲弊した」という課題感も存在します。

つまり、副業が“普通の選択肢”になることで、誰もが挑戦できるようになった一方で、「何を選ぶか」「どう続けるか」で大きな差が出る時代にもなっているのです。

人手不足と副業者増加の“裏の相関”とは

副業が広まっている背景には、もう一つ重要な要素があります。それが「労働力人口の減少」、つまり日本全体の“人手不足”です。

総務省の労働力調査によれば、日本の15〜64歳の生産年齢人口は1995年をピークに減少を続けており、2023年には全体の比率が約59%にまで落ち込んでいます。地方や中小企業では「働き手が足りない」という悲鳴が上がっており、アルバイトやパートタイム、フリーランスに対するニーズが急激に高まっています。

このような構造的な人手不足は、副業を志す個人にとってはむしろ“追い風”となります。スキルを持った人材をピンポイントで業務委託したい企業側のニーズと、「本業以外でも収入を得たい」という働き手側のモチベーションが、いま劇的にマッチし始めているのです。

  • ライターや動画編集者など、専門職副業の案件数は前年比1.4倍(2024年調査)
  • クラウドワークスでは登録者のうち副業ユーザーの割合が68%に増加
  • 地方の企業が副業人材(都市部在住)をリモート活用する事例も増加

つまり、企業側が“正社員でなくてもいい”という選択を取り始めているからこそ、スキルを活かした副業人材が台頭しやすくなっているのです。

データが示す「副業の広がり方」とその格差

しかし一方で注意したいのが、「副業ができる人」と「副業に踏み出せない人」のあいだに、見えない格差が生まれつつあるということです。

たとえば、

  • 高学歴・都市部の人ほど、副業への参入率が高い
  • すでに本業でITリテラシーが高い人ほど、副業でも成功しやすい
  • 逆に、フルタイム労働・介護・育児など時間の制約がある層は副業が難しい

といった現実もあります。

また、副業を行っている人の月収中央値は2〜3万円と言われていますが、その中でも上位1割は月10万円以上を稼いでいるというデータも。つまり、やるからには戦略的に取り組まないと、ただ時間と労力を消費するだけになってしまう可能性もあるのです。

副業市場が拡大するなかで、「誰でも稼げるわけではない」「向き不向きがある」「知識と環境の差で大きく成果が違う」という現実も、データから見えてきます。

このような格差に対して、教育機関や自治体、民間サービスなどが「副業リテラシー」を底上げする取り組みを進めています。AIツール活用支援、副業ワークショップ、確定申告講座なども増えており、裾野を広げる努力が少しずつ始まっています。

副業と経済の「相乗効果」:個人の自立と社会の持続性

ここまで副業を取り巻く現状と背景を見てきましたが、改めて「副業は社会にとってもメリットがある」のだという視点を持っておきたいところです。

まず、個人にとって副業は以下のようなメリットをもたらします。

  • 収入の多角化による生活の安定
  • スキル向上・キャリアの選択肢拡大
  • 本業だけでは得られない「自分らしさ」や達成感の発見

一方、社会全体にとってはどうかというと

  • 人手不足の企業が柔軟に人材を確保できる
  • 雇用の流動化が進み、経済の新陳代謝が活性化する
  • 高齢者や子育て世代の社会参加が促進される

つまり、副業とは単なる「副収入」ではなく、個人の経済的自立と、社会のサステナビリティを両立させる可能性を持った仕組みなのです。

「副業が当たり前」の時代をどう生きるか

今後、副業はますます「当たり前」の存在になっていくでしょう。すでに企業も「本業のスキルを副業で磨いてほしい」と歓迎する傾向が出てきており、副業禁止は逆に“時代遅れ”とすら言われ始めています。

とはいえ、副業にはリスクもあります。確定申告、健康保険、社会保険、住民税の増加…といった副業ならではの注意点もあるため、正しい知識を持って取り組む必要があります。

副業ブームに乗ることが目的ではなく、「自分の人生をどう豊かにしたいか」という視点から、自分に合った働き方を設計する。これこそが、2025年以降の“副業前提社会”における成功のカギだと言えるでしょう。

もはや「副業するかしないか」ではなく、「どう副業するか」「どう副業を活かすか」の時代です。

あなたも、数字とリアルの両方を見ながら、ひとつの小さな一歩を踏み出してみませんか?

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