殺人未遂・爆破予告…クルド人の川口市異常事態を追う

この記事の要約
埼玉県川口市で発生したクルド人の集団騒動や暴力事件は、多文化共生を掲げる日本社会に重い問いを投げかけました。地域住民が抱える不安と怒り、そして行政の揺れ動く対応。背景には、仮放免制度や就労制限といった法制度の矛盾も絡んでいます。この記事では、殺人未遂事件や14歳少年の脅迫事件といった具体的な事例を取り上げながら、外国人との共生に立ちはだかる“現実の壁”と、それに向き合う市民・議会・市長の姿を追います。
クルド人100人が殺到──川口を揺るがした「非常事態」
2023年7月4日、川口市内で発生した“異常事態”が、地域住民の不安を決定的に深めました。
深夜、トルコ国籍の男性が刃物で切りつけられ、搬送された「川口市立医療センター」の前に、なんとクルド人100人ほどが集結。
大声が飛び交い、救急搬送は一時中断。混乱は午前1時まで続き、殺人未遂容疑で4人、さらに警官への暴行で2人が現行犯逮捕されるという、前代未聞の騒動に発展しました。
地元の三次救急病院が5時間半も機能停止した影響は深刻で、運が悪ければ命を落とす患者が出てもおかしくない状況でした。
そしてこの騒動は、川口市における“クルド人との共生”が限界を迎えつつあることを象徴する事件として、全国に波紋を広げていきます。
「もう限界」──地域住民が抱える不安と怒り
川口市や隣接する蕨市では、ここ数年で在留クルド人の数が急増しており、住民との摩擦も日に日に強まってきました。
川口市役所の担当者によると、市民からの苦情が急増したのはおよそ2年前から。
- ケバブ屋前に停車したトラックの運転手が堂々と食事中
- 夜の公園に集まるガタイの良い若者たちへの恐怖
- 暴走行為を繰り返す無免許車、そして小中学生の運転
「税金を納めている日本人が、なぜ肩身の狭い思いをしなければならないのか──」 そんな疑問が、怒りへと変わっていったのです。
特に、若いクルド人による集団行動、深夜の騒音、暴走行為が集中して起きる地区では、 「怖くて外に出られない」という声が珍しくなくなってきています。
2023年6月、川口市議会ではついに「外国人による犯罪の取り締まり強化を求める意見書」が採択されました。
衆参議長、総理、国家公安委員長、埼玉県知事、県警本部長へ向けたこの意見書では、 クルド人を名指しこそしていないものの、実質的にはその行動を念頭に置いています。
「そろそろキレイごとでは通用しない」── ある市議の言葉が、この地域の空気感をよく表しています。
14歳クルド人少年の“爆破予告”──不安が怒りに変わった瞬間
川口の混乱は、医療センター事件だけでは終わりませんでした。
2023年7月12日、川口市内の商業施設でトルコ国籍の14歳の男子中学生が大音量で音楽を流し、喫煙するなどの迷惑行為を繰り返していました。
警備員が「出入り禁止です」と注意したところ、その少年は「外国人を差別するのか」「爆破してやる」と脅迫。
その場を離れたかと思えば、再び戻ってきて入り口に煙幕花火を投げ込むという行動に出たのです。
これにより、埼玉県警はこの少年を脅迫および威力業務妨害容疑で逮捕。 保護観察処分にはなったものの、少年院送致は免れました。
「あの少年は地元では有名な存在だった」という噂も地元関係者の間ではささやかれており、 すでに川口市民の間では“実名報道はされていないが誰のことか察しがつく”レベルの認知度になっていたようです。
こうした事件の報道が続く中、川口市役所には抗議の電話が殺到しました。
担当職員によると、
- 7月4日以降、苦情電話は300件以上
- 1回の電話が2時間以上に及ぶことも
- 市民からの苦情は2割、残りは県外から
中には「日本人が殺される」「ヤクザを連れていく」といった過激な内容も含まれており、 すでにクルド人問題は“川口だけの話”ではなく、全国的な関心と不安を呼ぶ存在になっていたのです。
川口市長が示した「支援から送還へ」の180度転換
こうした状況を受けて、川口市の奥ノ木信夫市長は、国に対して2度にわたる要望書を提出しています。
最初の要望書(2020年12月)は、仮放免中のクルド人が就労できず困窮していることを理由に、
- 就労を可能とする制度の創設
- 健康保険など行政サービスの提供
を国に求める、いわば“支援重視”の内容でした。
しかし、2023年9月1日の2度目の要望書では、内容がガラリと変わります。
その冒頭には、
「不法行為を行う外国人に対しては、速やかに強制送還を行うべきである」
という一文が入り、市長の姿勢は明らかに“厳格路線”に転じた印象を受けます。
ただ、実際には2回目の要望書にも前回と同様の「就労容認」や「支援制度」の要望が残されており、 本質的なスタンスが180度変わったとは言いがたい点も見え隠れしています。
関係者によると、要望書の原案では「送還強化」は最後に書かれていたが、 世論の反発を懸念してわざわざ先頭に差し替えた、という事実もあるそうです。
“厳しくするようで、実は現状維持”──この中途半端な行政の立ち位置が、 市民の不満をより一層高めている原因とも言えるでしょう。
多文化共生という理想と現実の“ねじれ”
移民政策や外国人労働者の受け入れが、避けて通れない時代になった今──
「多文化共生」は美しい言葉ですが、それを支える仕組みがない限り、現場は混乱と不信で満ちる一方です。
仮放免という制度により、彼らは働けず、支援も少なく、生活のためにグレーな手段を選ばざるを得ない。 一方で、住民は増える迷惑行為と行政の“配慮”に苛立ち、対立は先鋭化していく。
このままでは、川口は「共生の最前線」ではなく、「排外の象徴」になってしまうかもしれません。
そしてこの問題は、川口市だけでなく、いずれ私たちの住む街にも降りかかる可能性があるのです。
「移民」「治安」「多文化共生」──これらの課題は、 もう“遠くの国の話”ではありません。
事件にだけ反応して怒るのではなく、 日々の暮らしの中で、私たち自身も「どんな共生を望むのか」を問い続けることが、今求められているのかもしれません。